ハワイから来日したばかりの小錦に「横綱を目指せ」と言った“胸毛の横綱”の眼力
突き押しを徹底的に仕込み、勝ってもまわしを取った時は「あんな相撲を取りやがって。ハワイへ帰れ」と怒った厳しさと、のちに小錦が「僕の発言が誤解を招いて批判された時もかばってくれた」と述懐した優しさ。
われ先に外国人力士や学生出身力士を入れ、十両になったら一人前扱いして厳しく接しない親方がいる今日から思えば、怒りにも優しさにも、育てる覚悟があった。
引退後も胃の縮小手術を受けるなど体調管理に苦心しながら、タレント活動や講演を続けている小錦さん。大みそかが来ると、師匠を超えて59歳になる。
▽若林哲治(わかばやし・てつじ) 1959年生まれ。時事通信社で主に大相撲を担当。2008年から時事ドットコムでコラム「土俵百景」を連載中。