鉄人・玉鷲「老いて強し」は知力の稽古にあり! “押し相撲は短命”蹴散らす工夫の数々
御年37歳。それでも衰える気配はない。
いまや角界で「鉄人」の名をほしいままにしているのが、前頭3枚目の玉鷲。現役関取最年長ながら、3場所連続で照ノ富士から金星を獲得中と、横綱をカモにしている。
所属力士が自身以外に幕下1人、序二段2人という小所帯の片男波部屋。稽古相手には不足も不足だが、弟弟子2人ないし3人を相手に相撲を取ることもある。「足りない分は頭数で補え」と言わんばかりだ。
過去の力士で言えば、横綱隆の里(元鳴戸親方)は力士2人に押させるなど、日々の稽古に工夫を凝らしていた。初代若乃花は苦手としていた右四つで組まれる、土俵際に追い込まれるなど、わざと自分を不利な状況に立たせてから稽古を開始することもあった。
「大相撲では『押し相撲の力士は短命』というのが通説です。年をとれば、それだけ突き押しの威力やスピード、前に出る圧力が落ちる。半面、自分の型を持っている四つ相撲の力士は衰えが相撲に出にくく、長く活躍できる。玉鷲は典型的な押し相撲の力士だが、むしろ年々強くなっている印象です。母国のモンゴルではほとんどスポーツ経験がなく、初めて相撲に触れたのも19歳とスタートも遅かった。だから逆に『鍛える余地があった』と話す親方もいますが、それ以上に頭を使って稽古をしているからこそです」(ある親方)
玉鷲が衰え知らずなのも、それだけ日々の稽古で他の力士に差をつけているからだろう。
1日10番20番の稽古で「今日もいい汗かいた」なんて満足している力士は、鉄人のツメのアカを煎じて飲んだ方がいい。