野球賭博発覚の2010年名古屋場所「満員御礼を出そうか、館内を3周して迷った」
ドルフィンズアリーナは2階の内周沿いにコンコースがあって、ぐるりと回れる。12年前、元関脇金剛の二所ノ関親方はここを歩いたのだろうか。
2010年名古屋場所は、野球賭博の発覚で日本相撲協会が大関琴光喜を解雇し、武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)や10人の関取らが謹慎、休場した。NHKが中継せず、協会も天皇賜杯の授与を自粛する異常事態。その運営を仕切る立場にあったのが名古屋場所担当部長の二所ノ関親方だった。
初日の観客は定員8100人に対し7200人。打ち出し後に明かした。
「満員御礼を出そうか、館内を3周して迷ったよ」
目安の9割(7290人)にわずか。出してもいい数字とはいえ、出せば水増しと批判される。思いとどまり、記録が残る1985年以来初めて、名古屋場所初日の満員御礼は途切れたが、迷うくらいまで入った。
前日、土俵祭に来た観客が前売り券を買っていくのを見た二所ノ関親方は、思わず「毎日でも土俵祭をやりたいくらいだ」と口にしている。