ハワイから来日したばかりの小錦に「横綱を目指せ」と言った“胸毛の横綱”の眼力
元大関でタレントの小錦八十吉さんが6月に来日40周年パーティーを開いた。初土俵は1982年名古屋場所。あの頃から名古屋場所は暑かった。まして今年は場所前から「生命に関わる」猛暑。
もしも今、小錦の師匠だった「胸毛の横綱」こと元横綱朝潮の5代目高砂親方がいたら、巨体を縮めて力士の体調管理に気をもんでいるだろう。
小錦の体重が240キロに迫る頃だったか。記者から「力士生命に関わるのでは」と聞かれ、太いまゆを吊り上げた。
「何を言ってるんだ。力士生命じゃない、人間生命の危機だ!」
いかつい風貌でよく怒ったが、この時はひときわ真剣だった。
弟子が病気で重篤になった経験があった。医師から「今夜がヤマだが厳しい」と言われ、当時の春日野理事長(元横綱栃錦)を訪ねて「申し訳ありません。子どもが1人亡くなります」と頭を下げたという。その力士は奇跡的に助かって活躍もしたが、「あの時の気持ちは何とも言えない」としみじみ話していた。