「くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話」ヤマザキOKコンピュータ著/タバブックス(選者:稲垣えみ子)
お金は目的でなく道具、量より質が肝心
「くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話」ヤマザキOKコンピュータ著
前回、自分のことを「最もビジネスマンから遠い人間」と書いたばかりなのに先日、まさかのビジネス書(対談本)「シン・ファイヤー」を出してしまった。それだけでもドキドキなのに、内容は「お金の心配から永遠に自由になる方法」。ええ、普通に考えたら、そんなウマイ話あるわけない。何しろ人生100年時代、何歳まで生きるか、何の病を得るかも不明となれば、どこまでもお金の心配は尽きまじ。
でもですね、実は、その「常識」は案外ウッスい凝り固まった思い込みの産物であるというのが、対談相手である「年収90万円で東京ハッピーライフ」の著者・大原扁理さんと、大企業からの退職を機に自分なりにお金を巡る独自の実験を繰り返した私の、実体験に基づく結論なのであります。
で、その対談で大原さんに教えてもらったのが本書。著者のヤマザキOKコンピュータさんはパンクロッカー。とにかく文章が正直で、勇気があって、つまりはキレている。
〈20代前半までの俺は、通いやすい銀行にお金を預けて、手に入りやすい物を買って生活していたわけだけど、その結果、とにかくつまらない街がえんえんと広がってしまった〉〈悔しいけど、この街をつくったのは俺たち自身だ〉〈自分たちが笑って生活していくために、お金をどのように使い、どこに預けるのか、全て自分の意思で選び取っていきたい〉くう~、かっこいいね。
だから株を買うだけではなく、生活のあらゆるシーンが投資になる。稼ぎの量も重視しない。その多くが、われら2人の主張と驚くほど同じ弧を描いていることに感動しながら読んだ。だって年齢も経歴も性別も違い、連絡を取り合っていたわけでもない3人が、それぞれにおカネと格闘した結果、同じ地点に立っているとなれば、これは真実と考えるべきではないだろうか。
われら3人の主張で共通しているのは、お金は目的でなく道具、肝心なことは量でなく質ということだ。大金持ちでも使い方を誤れば自分も他人も不幸にするし、いわゆる貧乏人でも良き使い方をすればナンボでも自分も他人も幸せにできる。そう、肝心なのは金を貯めることでなく、クソつまらなくない今を生きること。当たり前だけど、みんな忘れてること。 ★★★