熱狂的なファンに塩酸をかけられた美空ひばり
<1957年1月>
89年6月24日に52歳の若さで亡くなった美空ひばり。何度もスキャンダルに見舞われたが、もっとも悲惨だったのは57年の出来事。公演中に観客から塩酸をかけられる事件があった。犯人はひばりの熱狂的ファンだった。
1月13日の午後9時40分。ひばり(当時19)は東京・浅草の国際劇場で正月公演「花吹雪おしどり絵巻」の舞台に立っていた。舞台カーテンの脇でフィナーレの出番を待っていると、超満員の観客席から女性が舞台に這い上がってくる。
この女性は「ひばりちゃん」と叫んで駆け寄ってきた。ひばりが振り向くとコートのポケットから瓶を取り出し、顔に中の液体を浴びせた。最初は何が起きたかわからなかったが、液体は塩酸だった。女がもう一度ひばりに向けて塩酸をかけると、今度はひばりは顔にやけどをしたような熱さを感じた。
近くにいたひばりの叔母が異変に気づき、女を突き飛ばす。そして建物の中にあった防火用水をひばりにかけた。女は逃げようとしたが、その場に居合わせたブロマイド業者に取り押さえられて警察に引き渡された。