熱狂的なファンに塩酸をかけられた美空ひばり
ひばりはすぐ病院に搬送され、顔と胸と背中に塩酸を浴び、全治3週間のやけど。叔母のとっさの措置と舞台化粧の厚いドーランに助けられ傷は残らずにすんだ。塩酸は近くにいた付き人や俳優にもかかり、3人がやけどを負った。
犯人はひばりと同い年の当時19歳。もともと山形県の紡績工場で働いていたが、「東京に出れば、憧れのひばりちゃんや(雪村)いづみちゃんに会える」と前年に上京。住み込みで板橋区の会社役員宅のお手伝いさんとして働いていた。ひばりの映画は欠かさず見るという大ファンで、勤め先の部屋にはひばりのブロマイドが張られており、ひばりの家に何度も電話をかけ、「会わせて欲しい」と頼んでは断られたりしていた。
事件の2日前、女性は勤め先の家を「世の中が嫌になった。死にたい」というメモを残し、飛び出す。さらに、犯行前日に国際劇場での正月公演の昼の部を見た女は上野の旅館で手帳に「こんなに好きなのにひばりちゃんが憎らしい。あの美しい顔に塩酸をかけて醜い顔にしてやりたい」との思いを書きつける。
当日午前、女は映画館でひばりが主演する映画を見て、その足で当時手に入れやすかった工業用の塩酸2合を買った。