“年下女性”も芸の肥やし…浅野忠信が突き進む「名優」への道
モスクワ映画祭で最優秀男優賞
そういえば、浅野忠信(40)は6月2日の会見で主演作への熱い思いをこう語っていた。
「30代は役者として難しい。40(歳)でなければ演じられない役。自分の中でイメージして欲しかった役のひとつです」
そんな自負もみなぎる演技が国際映画祭で評価された。第36回モスクワ映画祭で主演映画「私の男」(熊切和嘉監督)により最優秀男優賞を受賞。日本人の男優賞は83年の加藤嘉(映画「ふるさと」)以来、31年ぶり2人目の快挙だ。同作はグランプリ(最優秀賞作品賞)も獲得。「2冠達成」の世界的な名声を得たことになる。
桜庭一樹の同名小説の映画化。北海道を舞台に震災孤児となった少女(二階堂ふみ=19)と、少女を引き取った男(浅野)の禁断の愛を描いたR15+作品である。
映画ジャーナリストの大高宏雄氏が言う。
「一回り以上も離れた危ない年の差男女の関係を描き、多くの観客が共感しにくいストーリーですが、作品自体に力があり、見る人が『私の男』の世界観にグイグイと引き込まれていく。今回のグランプリ受賞は欲望丸出しの男ではなく、何ともいえない中年男のたたずまいを表現した浅野の功績が大きいのではないでしょうか。デビュー作の『バタアシ金魚』(90年)は端役ながら、エネルギーあふれる男の役で目を見張るものがあり、その後、初主演作の『Helpless』(96年)で頭角を現した。彼の最高傑作といっても過言ではない『殺し屋1』(01年)の延長線上にあるような今回の役柄。胸のうちに凶暴性を帯びた男の役はハマリ役。さまざまな監督の作品に出演し、海外でも揉まれてきただけにあらゆるジャンルの作品に対応できる。日本男優で5本の指に入る実力の持ち主でしょう」