佐藤蛾次郎「松田優作は俺をちゃかす客に『殴ってくる』と」
今から40年チョイ前の73年の冬だったね。その日は大阪で仕事を終えた後、新大阪駅から東京駅へ向かってたんだ。それで車内でビールとかウイスキーを飲んで、トイレに入ったところで寝ちゃったんだね。
それでも、トイレに鍵をかけてれば、東京駅到着後に車掌さんの車内点検で分かったんだろうけど、無施錠だったから逆に見逃されたんだな、きっと。
バッグは忘れ物扱いで東京駅で降ろされてるから、所持金といえばポケットの小銭だけ。しょうがないから、自宅に電話して、女房に品川駅までクルマで迎えに来てもらうことになり、東海道線でトコトコ帰ったよ。
ようやく品川駅のホームに降りた時の寒さといったらない。まあ、一生に一度の大ドジだな。
酒といえば、実の兄貴のように慕ってくれた松田優作のことも忘れられない。優作と知り合ったのは日活のアクション映画「あばよダチ公」(74年)のロケ。優作が主役で、オレは助演。衣装合わせの時に優作だけ遅れてきたもんだから、最初はカチンときたんだ。でも、ちょうど刑事ドラマ「太陽にほえろ!」のジーパン刑事役でブレークしてた時だったから、けっこう忙しくてね。