佐藤蛾次郎「松田優作は俺をちゃかす客に『殴ってくる』と」
それが分かったもんだから、錦糸町での撮影初日に一緒に昼飯を食いにラーメン屋に入って、意気投合してさ。ロケの途中なのに、昼間っからビール飲んじゃって、急に親しくなった。
「あばよダチ公」の後も75年に半年続いた刑事ドラマ「俺たちの勲章」(日本テレビ系)、78年の東映の映画「殺人遊戯」で共演したから、暇さえあれば、一緒に飲み歩いた。オレも優作も役者同士でつるむのが好きじゃないのに、不思議とウマが合ったんだね。
飲んでる時に話すのはその日のニュースとかたわいのないこと。芝居の話とか一切なかった。だからよかったんだと思うよ。プライベートの時間なんだから、仕事のことは一切忘れたいだろ?
それからオレが新橋でスナックを始めたら、よく通ってくれた。飲むのは決まってバーボンのロック。何回か自宅へ遊びに行った時も、飲んでたのはバーボンロックで、酔っても騒ぐタイプじゃなかったね。
ただ、先輩に対する気遣いってのは人一倍あった。ある店で一緒に飲んでた時、ほかのお客がオレのことをちゃかすような言い方で呼び捨てにしたら、エライけんまくで怒ってさ。「ちょっと殴ってきます」って席を立ったんだ。そんなことしたら新聞沙汰になるから力ずくで押さえたけど、根が正直なんだよな。
早いもので優作が亡くなって11月で丸26年。天国でも氷をカランコロンいわせながら、飲んでるんだろうね。