作曲家・三枝成彰さん 学生時代はゴールデン街につぎ込んだ
日本を代表する作曲家のひとり、三枝成彰さん。さまざまな分野に精通する粋人としても知られているが、酒も幅広い。ガード下の焼き鳥店から高級料亭まで酒席の守備範囲は広く、世界各国での思い出も数多い。
■飲み代はピアノのレッスンで稼いだバイト代
酒は切れたことがないなあ。1浪して東京芸術大学音楽学部作曲科に入学して以来、ずっと飲んでます。休肝日なんて月に1度あるかないか。もちろん健康診断とか検査入院の前後は飲まないけど、それ以外は飲みっぱなしですよ。
父がかなりの酒豪でしてね。そのDNAを引き継いでいて、それなりにイケる口です。70歳すぎた今でも、日本酒なら1升、ウイスキーだとボトル1本空けても、酔いつぶれるなんて、まずありませんから。
大学時代の行きつけは新宿ゴールデン街。1960年代の半ば、まだ青線(非合法の売春地域)があって、怪しすぎて入るのをちゅうちょするような店がたくさんあったころです。
うさんくさい場所ではあったものの、安く飲めた上に、仕事も経歴も思想もさまざまな人が来てたから、すごく刺激的でね。酔うことも楽しかったけど、音楽のことや時事問題、社会問題を議論するのが楽しくて、毎晩のように足を運んでました。飲み代はピアノのレッスンや合唱の伴奏で稼いだバイト代。翌日のことなんてまったく考えないで、全部つぎこんでいたものです。