テレ東「家、ついて行ってイイですか?」が醸す絶妙な距離感
【連載コラム「TV見るべきものは!!」】
テレビ東京で放送中の「家、ついて行ってイイですか?」。「この番組は終電を逃した人に家を見せてもらうだけの番組です」と冒頭で宣言しているが、まさにその通りの内容だ。にもかかわらず、見始めたら最後まで目が離せない。
番組は深夜の街角からスタートだ。終電が行ってしまった後、うろうろしている人たちに、スタッフが「タクシー代を払うので」と声をかける。OKが出たら家(部屋)までカメラが同行する。タレントでも有名人でもない“普通の人々”が、生活感満載の自室で語る“普通の人生”が、とても普通とは思えないほど面白い。これまで単発的に放送されていたが、この秋、堂々のレギュラー番組となった。
先週登場したのは3人。相方との共同生活を続けながら、お笑い芸人を目指す28歳の男性。保育士を辞めてガールズバーで働く24歳の女性。そして映画監督の夢を抱きつつ、アパートの3畳間で暮らす31歳の男性である。
中でも3歳から14年間を施設で過ごしたという3畳間監督の話は、淡々としているのに妙なリアリティーがあった。だが、番組はあまり踏み込まない。あくまでも、ちょっと家に寄らせてもらった通りすがりの位置にいる。この距離感がいいのだ。
スタジオ代わりは、お邪魔した一般人の部屋。ビビる大木とおぎやはぎの矢作、そしてゲストがVTRを見ながら語り合う、ユル~い感想も深夜ならではの味わいだ。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)