椎名桔平主演「破裂」 大人には堪えられぬ秀逸医療サスペンス
【連載コラム「TV見るべきものは!!」】
現在、原作=久坂部羊のドラマが2本、同時に放送されている。フジテレビ系「無痛」と、NHK土曜の「破裂」だ。大阪大学医学部出身の医師でもある久坂部。ドラマに登場する、「医者は3人殺して初めて一人前」といったセリフにもリアリティーがある。
舞台は帝都大学病院。心臓外科の准教授・香村(椎名桔平)が、老化した心臓を蘇らせる画期的な治療法を開発する。最初の被験者は国民的俳優で、香村の実の父親でもある倉木(仲代達矢)だ。手術は成功するが、致命的な副作用が判明する。時間が経つと心臓が破裂してしまうのだ。教授の座を切望する香村は、事実を隠しながら研究を進めることを決意。ギラついた芝居で医師の暗黒面を表現する椎名がいい。
一方、香村を操ろうとするのが官僚の佐久間(滝藤賢一)だ。狙いは、超高齢化社会の解消。滝藤はダブル主演かと思わせる怪演で、策士・佐久間と一体化している。
昨年の「医龍」(フジテレビ系)も手掛けた浜田秀哉の脚本は、原作を巧みにアレンジしながら、香村と佐久間の対決軸を鮮明に打ち出していく。
そもそも医療サスペンスには、「命に関わる」という大前提からくる緊迫感がある。そこに医療行政をめぐる国家的陰謀が加わり、奥行きのある物語となった。主人公も含め悪人と呼べそうな連中が並んでいるのもオトナには堪えられない。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)