野球評論家・川藤幸三さん語る 「19年現役は酒のおかげ」
高校出たばっかの小僧にしてみたら、衝撃的ですわね。ほんでも、それはプロで飯食うことの本質でもあるんや。そんな諸先輩方の中でも、ワシにとって特別の存在が遠井吾郎さんやった。酒でも野球でも、ワシの大師匠やね。
ワシより10歳上で60年代半ばから70年代初頭までタイガースの4番。「仏のゴローちゃん」てゆわれるぐらい温厚ながら、他を寄せつけんくらいの酒豪でね。口は上手やなくて、酒は淡々と飲むタイプ。そんなところが似とったせいか、「飲みに行くぞ」ゆうて、ようけ可愛がってもろうた。
行けば必ず、ハシゴで朝までコース。朝日が昇るころに「そろそろ帰りませんか」「そうやな、あと5分だけ」……。こうゆうてそれから1時間や。夜遊びするんは女目的の人が多いんやけど、遠井さんは酒だけやった。
■「憂さ晴らしなら飲むな」の教え
朝まで飲んでも、その日に試合って時は球場に早う来て、減量中のボクサーが着るカッパみたいなコート着て、黙々と外野のフェンス沿いを走る。汗をガッとかいてアルコールを抜くっちゅうワケや。自他ともに認める鈍足で、普段は走るのが大嫌いやのに、真夏のカンカン照りの日でも走っとった。