<上>僕は随分長い間、2番手、3番手の俳優でした。でも…
シリアスからコミカルまで、舞台、映画、ドラマと土俵を選ばず、出演した作品で独特の存在感を放つ。俳優の橋爪功、75歳。役者の道を歩み続けてはや50年以上、決して平坦な道のりではなかったその半生を振り返る。
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僕が役者だけで食べられるようになったのは、40歳を過ぎてからです。それまでいろいろなアルバイトもしましたし、他人様に迷惑をかけたりもしました。ただ、役者を辞めようと思ったことは一度もありませんね。
40代になったころから、テレビドラマのプロデューサーや監督が「この役はヅメさんしかできないから頼むんだよ」などと持ち上げながらオファーをいただくようになりました。ですが、よくよく見たら台本の一部が黒く塗り潰されていたり、何かを貼って修正されたりしている。そんな経験は一度や二度ではありません。これが何を意味するかというと、他の役者が断ったからこちらにお鉢が回ってきたということなんです。
たいがいは周囲から毛嫌いされるような小悪党の役ばかり。ヒールとかヒーローとか大きな役ではありません。それでも制作側には第1、第2の候補がいる。そんなお目当ての役者に断られ、その次の役者に声をかけたものの難色を示されて、いよいよ撮影が迫ってきて、もう僕しかいないっていう時にオファーがくるわけです。僕は随分長い間、2番手、3番手の俳優でした。でも、それがうれしかった。あ、またあいつ断ったなって思うと余計に燃えちゃう。台本以上に鼻持ちならない役にしてやろうって気合が入るんです。