映画は“ドラマ”だけど、テレビは“チック”を描くのが神髄
倉本氏が人生初の帯ドラマに挑んだ「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)。1話当たりの放送時間は通常ドラマの4分の1程度だった。
倉本 僕、コマーシャルを結構撮っているんですよ。コマーシャルは1本当たり15秒程度。フィルムは1秒が24コマなんですが、削りに削って短い時間の中で勝負する。だから15秒ではなく、もしも1分間与えてくれたら、さらに面白いものができるんだろうって考えていたので、この15分程度の尺はとてもやりがいがありました。
碓井 先生はその15分間で何を重視されたのですか。
倉本 昔、東横映画のマキノ光雄さんが、「この映画にはドラマがあってもチックがない」といった有名な話があるんですが、僕、この言葉がとっても印象に残っているんです。映画からテレビに移ったときに、映画は、〈ドラマ〉だけれど、テレビは、〈チック〉が大事だなって思った。〈ドラマチック〉って言葉がありますでしょう? テレビはむしろ〈チック〉のほう、細かなニュアンスを面白く描くのが神髄じゃないかなって。
碓井 それってテレビドラマは本線というかストーリーだけじゃなくて、一見物語とは無関係な寄り道みたいなシーンによって豊かなものになるということですか。