学生運動を背景にした平安貴族の残酷趣味を描く「地獄変」
芥川龍之介の名作を「文芸映画の巨匠」と呼ばれる豊田四郎が監督。今月22日からラピュタ阿佐ケ谷で上映される。
平安時代。天才絵師の良秀(仲代達矢)は権力者・堀川の大殿(中村錦之助)から極楽図を描くよう命じられるが、自分の画風に合わないとの理由でこれを断る。大殿は権力をほしいままにし、弱い者の命を軽視する暴君。その暴君を良秀は批判し、大殿は帰化人である良秀を軽侮する。
ある日、堀川の屋敷に1匹の猿が舞い込み、追ってきた若い女が大殿の目に留まって邸内に幽閉される。実は女は良秀の娘・良香(内藤洋子)で、父の良秀は何よりもこの娘を可愛がっていた。
娘を返して欲しいと懇願する良秀に、大殿は屏風に地獄絵を描けと命じる。良秀は自分は見たものしか描けないので、炎上する牛車を見たいと言う。大殿は願いを聞き入れ、後日、良秀を呼び、用意した牛車のすだれを開ける。あっと驚く良秀。そこには鎖で縛られた良香が。大殿の命令で火がつけられると、牛車は夜空に紅蓮の炎を上げ、良香もろとも焼け崩れるのだった……。