著者のコラム一覧
クロキタダユキ

シークレット・オブ・モンスター(2015年、英国・ハンガリー・仏国)

公開日: 更新日:

 第1次大戦後のフランスの片田舎に、米政府高官がベルサイユ条約締結のため、家族とともに赴任する。金髪の一人息子プレスコットは、だれもが女の子と見間違えるほどのかわいらしさだが、両親には激しく反発。やがて異常な行動をとるようになる。

 哲学者サルトルの短編小説を映像化した本作は、実際の事件をベースに架空の話が本当にあったかのように進行する。とにかく頭が混乱する。たとえば、本当にプレスコットはいたのか―――みたいに。

 その主人公は、周りの大人を翻弄しつつも、美人家庭教師に興味を抱く。渡された童話から得た教訓が今回の言葉だ。

 原作を読んでいないから分からないが、少年のモデルはムソリーニらしい。独裁者は幼いころ大人に投石したり、女の子のようないでたちだったらしく、少年の映像とダブる。

 絵画のような荘厳な映像と神経を逆なでするような不気味な旋律で、歪んだ少年期を過ごした男が恐怖の独裁者へ変貌する姿を描く。音楽を担当したスコット・ウォーカーは、デビッド・ボウイやブライアン・イーノに影響を与えただけに、さすがの音響効果だ。

 作品中にちりばめられたエピソードがラスト、パズルのようにはまって独裁者につながる。

「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミ監督が「最高」と絶賛したのも納得の心理ミステリーだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  2. 2

    人事局付に異動して2週間…中居正広問題の“キーマン”フジテレビ元編成幹部A氏は今どこで何を?

  3. 3

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  4. 4

    中居正広氏&フジテレビ問題で残された疑問…文春記事に登場する「別の男性タレント」は誰なのか?

  5. 5

    TV復帰がなくなった松本人志 “出演休止中”番組の運命は…終了しそうなのは3つか?

  1. 6

    "日枝案件"木村拓哉主演「教場 劇場版」どうなる? 演者もロケ地も難航中でも"鶴の一声"でGo!

  2. 7

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  3. 8

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」

  4. 9

    ビートたけし「俺なんか悪いことばっかりしたけど…」 松本人志&中居正広に語っていた自身の“引き際”

  5. 10

    フジテレビを襲う「女子アナ大流出」の危機…年収減やイメージ悪化でせっせとフリー転身画策

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…