シークレット・オブ・モンスター(2015年、英国・ハンガリー・仏国)
第1次大戦後のフランスの片田舎に、米政府高官がベルサイユ条約締結のため、家族とともに赴任する。金髪の一人息子プレスコットは、だれもが女の子と見間違えるほどのかわいらしさだが、両親には激しく反発。やがて異常な行動をとるようになる。
哲学者サルトルの短編小説を映像化した本作は、実際の事件をベースに架空の話が本当にあったかのように進行する。とにかく頭が混乱する。たとえば、本当にプレスコットはいたのか―――みたいに。
その主人公は、周りの大人を翻弄しつつも、美人家庭教師に興味を抱く。渡された童話から得た教訓が今回の言葉だ。
原作を読んでいないから分からないが、少年のモデルはムソリーニらしい。独裁者は幼いころ大人に投石したり、女の子のようないでたちだったらしく、少年の映像とダブる。
絵画のような荘厳な映像と神経を逆なでするような不気味な旋律で、歪んだ少年期を過ごした男が恐怖の独裁者へ変貌する姿を描く。音楽を担当したスコット・ウォーカーは、デビッド・ボウイやブライアン・イーノに影響を与えただけに、さすがの音響効果だ。
作品中にちりばめられたエピソードがラスト、パズルのようにはまって独裁者につながる。
「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミ監督が「最高」と絶賛したのも納得の心理ミステリーだ。