室井滋<下>役者として興味が持てる役が少なくなっている
「学生時代、大竹さんが出演なさっていた作品でエキストラのバイトをしたことがあるんです。映画だったかドラマだったか忘れてしまったんですが、その撮影現場で『人気女優を見ちゃった~』なんて遠巻きにコーフンしていたことを覚えています。最初からスター街道を歩んでいらっしゃった方と、かたや大学に7年も通った揚げ句に中退した私。人生、なにがあるか分かりませんね」
ベテランの域に入り、気付けば自分より若い世代に囲まれて仕事をする機会が多くなった。女優業には定年はないが、「形を変えていく必要はある」と話す。
「言葉を選ばずにいえば、私自身が見たいと思う作品、そして役者として興味が持てる役どころが少なくなってきていると感じています。高齢化社会といわれるのに、私たちよりも上の世代が抱える悩みや希望を生むようなテーマを描く作り手も減っている。そこには役割分担みたいなものがあって、若者が目を向けてくれたとしても、それはどうしても若者の年配者に対する目線になってしまう。仕方がないかもねと思うんですが、私にできることといえば、自分に与えられた寿命が来るまで、時々の変化をどう楽しんでいくのか、若い頃よりも真剣に向き合うことなのかなって。いろんなことを諦めているようで、諦めていない。もがきながらの人生です」