映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」スマッシュヒットの理由
落ち目のテレビ俳優リック(レオナルド・ディカプリオ)は、業界内で徐々に忘れられていく現状に怯え、専属スタントマンのクリフ(ブラッド・ピット)と酒を飲み愚痴をぶちまける日々を過ごしている。やがて隣に越してきた人気監督ロマン・ポランスキーとその妻シャロン(マーゴット・ロビー)とのあまりの格差に焦りを感じた彼は、これまでバカにしてきたマカロニウエスタンの仕事をついに受けることにするが……。
「確かに万人向けのわかりやすい映画では全くないのですが、おおむね45歳以上のアメリカ文化好きには、背筋が震えるほどの感動を与えるポテンシャルを持った作品です。タランティーノ監督は惨殺事件の報道を6歳で体験した世代。その後、彼がメシより愛することになる古き良き米映画とハリウッドの鷹揚な魅力がこの事件で永遠に変わり、失われてしまった。本作にはそんな、今はもう存在しない、彼が愛したアメリカとその未来を必死にフィルムに再現しようとした切なさを感じます。落ちぶれたレオが、西部劇の撮影で最後の意地を見せるシーンや、監督持ち前の暴力描写でこの上ない幸福感を作り上げた衝撃のクライマックスなど、心に残る見せ場がいくつもあります」
往年のハリウッド映画でアメリカ文化にあこがれた中高年世代の琴線に触れる映画ということか。「これまででもっともパーソナルな作品」と語るタランティーノ監督の思いは、もくろみ通り日本の観客に届いているようだ。