初老男の苦悩を描く「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

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 われらサラリーマンも「今の生き方でいいのか」と自分史を疑うことがある。リーガンはわれわれの代表であり、目の前に立ちふさがる内なるバードマンと戦っている。だから妄想にかられて暴れる。

 ラストはバードマンと決別するリーガンの姿。人間の幸福は心の持ちようで決まる。高杉晋作は「おもしろきこともなき世をおもしろく」と詠み、野村望東尼(もとに)の結句「すみなすものは心なりけり」に「面白いのお」と呟いて命を閉じた。

 自信を回復して窓枠を越えた父と、父を探して空を見上げる娘。彼女のブルーの瞳に何が映ったのかは分からない。ただ、「あはは」という無邪気な笑い声が大団円の余韻を残すのだ。

(森田健司/日刊ゲンダイ)

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