映画3本分のギャラが…鶴田浩二さんとゴルフの苦い思い出
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俺が東映に入社して最初に仁義を切った相手は鶴田浩二さんだった。仁義を切るたって、人を介して、ちゃんと初対面の挨拶をしたってこと。要するに、後輩として大先輩に筋を通しただけなんだけどね(笑い)。
そのとき、鶴田さんが俺に言ってくれた言葉が素晴らしかった。
「後輩は先輩を利用すればいい。つまり、おまえは俺を利用して大きくなっていってくれ」
その後、俺も後輩にこの言葉を贈るようになった。世の中、そうやって回っていけばいいんだよ。
そんな鶴田さんとの初共演は思わぬ形で巡ってきた。「荒原牧場の決斗」という映画で鶴田さんと高倉健さんが共演するはずだったんだ。ところが、クランクイン直前になって健さんが降板。鶴田さんは俺を呼び出して、こう言った。
「高倉がこの映画をやりたくないって言うんだよ。だから、辰夫が代わりをやってくれ」
つまり、鶴田さんじきじきの指名で、俺は健さんの代役を務めることになった。実は、健さんは鶴田さんを嫌っていたんだ。健さんの演技を見た鶴田さんが「ズブの素人だ」と挑発的な発言をしたもんだから、頭にきた健さんが鶴田さんを撮影所裏に呼び出したなんてこともあったらしい。