映画3本分のギャラが…鶴田浩二さんとゴルフの苦い思い出
鶴田さんは自分の演技に自信がある。だから、他の役者には厳しい。たとえば、セリフ覚え。あの人は自分のセリフどころか、相手のセリフも全部頭に入れて、時間通りに撮影現場に現れた。どんなに女と遊ぼうが、どんなに深酒しようが、そこはブレなかった。
当然、セリフが頭に入ってないような役者は酷評されることになる。
ところで、俺も鶴田さんには苦い思い出がある。それはゴルフでの賭け。もともとゴルフは俺が鶴田さんに教えたぐらいだから、実力はこっちのほうが上。事実、最終ホールの前までは俺の圧勝だった。でも、最後の最後にどんでん返し。というか、途中で最終ホールに勝ちさえすれば、それまでどんなに負けてても賭け金すべてを持っていけるルールに変更された。
当初、賭けは日頃の俺への感謝の気持ちもあってやったのかなと思ってた。それまで俺は鶴田さんのために女優との密会場所を探すようなことを散々やらされていたからね。しかし甘かった。
最終ホールに勝った鶴田さんは無慈悲にも俺から15万円をむしり取っていった。当時の俺にとっては映画3本分のギャラだぜ。今の貨幣価値なら150万円くらいか。
あまりにも悔しいし、しゃくに障るから、ゴルフクラブを木に叩きつけて、全部へし折った。
「もう金輪際ゴルフなんかやらねぇ」
そう思ったよ。事実、この日を境に俺はゴルフクラブを握らなくなった。(つづく)