「夜霧よ今夜も有難う」は石原裕次郎を窮地から救った
石原裕次郎は、NHKの紅白歌合戦には歌手として出場していない。
「嵐を呼ぶ男」「俺は待ってるぜ」「赤いハンカチ」「銀座の恋の物語」、そして「夜霧よ今夜も有難う」など数多くのヒット曲を飛ばしながら、「歌は素人だから」というのが理由だ。その矜持を通した男だった。
裕次郎の代表曲の一つである「夜霧よ今夜も有難う」を作詞・作曲した浜口庫之助は生前、私に「裕ちゃんは歌はうまくない。が、おいしい歌を歌える人ですよ」と語っていた。
自称“素人歌手”は、ホロ酔い気分でないとテレビでは歌えないと、ビールを飲んで臨んだとの逸話もあった。それが「おいしい歌」になっていたのかもしれない。
■巨額納税が迫り大ヒット曲が欲しかった
さて、代表曲である「夜霧よ今夜も有難う」の秘話である。この歌は、浜口がじかに作詞・作曲を依頼され、二つ返事で引き受けて誕生したものである。
昭和42年、裕次郎が33歳のころ、山梨県のゴルフ場でたまたま浜口と一緒になり、プレー後、話す機会があった。