「未来世紀ブラジル」(1985年)20世紀フォックスホームエンターテイメント
ディストピアは、そこに生きる人間にはユートピアだったりするもの。真実に目覚めるとディストピアだった、という恐怖。本作はそんな絶望をコミカルに描く、カフカの「城」の映画版というべき名作だ。
舞台はすべてが情報統制された「20世紀のどこかの国」。いわばAIに支配された官僚制社会。しかしどんな管理にも欠陥はある。その小さなほころびから主人公の下級官吏サムは「気付かなければよかった世界」に落ち込んでいく。
題名の「ブラジル」は90年前にヒットしたブラジル音楽の名曲。映画ではサムの逃避幻想を象徴したり、灰色の官僚制社会をコミカルに皮肉る効果で使われた。
確かにトランプや安倍を支持するネトウヨも「思い込んだほうが得」とばかりに集団幻想に逃げ込んでいるようなもの。究極のディストピアは自分の心の中にこそ存在しているのかもしれない。