元引きこもり・山田ルイ53世 今こそ無駄を許容する社会を
中2の夏のある日。通学の途中、突然の腹痛に襲われた。そして脱糞、つまりウンコを漏らしてしまったのだ。「神童」ゆえ、イジられるという選択肢もなかった山田。何とかそのまま、学校に通っていたが、幸いにもすぐに夏休みが訪れた。だが、夏休みが明けると、足が学校に向かなくなった。
そこから20歳までの6年間、引きこもり生活に突入したのだ。部屋を出るのはトイレ、風呂、食事の時くらい。家族が寝静まった頃、冷蔵庫などを物色し、食料を確保する。引きこもり中も高校を受験したりもしたが、失敗。「人生が余ってしまった」という心境だった(同前)。
20歳を迎えようという時期、テレビで成人式のニュースを見た山田はこのままの状態で、同級生たちが「大人」になっていくのはさすがにマズいと意を決した。猛勉強し大検を取得。ようやく引きこもりを脱した。
「その6年間があったから、今の山田さんがあるんですよね?」「全ての時間が、あなたの糧となったんですよね?」などと美談でまとめられることが多いという山田だが、「あの6年間は、僕にとって無駄やった」(「読売新聞」19年8月23日)と断言する。