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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

NHK「路~台湾エクスプレス~」癒やされること必至の秀作

公開日: 更新日:

 先週から始まった「路~台湾エクスプレス~」(全3回)。タイトルだけ見ると、かつての「プロジェクトX」が思い浮かぶ。だが、台湾新幹線実現への取り組みは物語の一面だ。軸となるのは日本人と台湾人の運命的な「つながり」である。

 主人公の多田春香(波瑠)は学生時代からの台湾好き。大手商社に就職して4年目、台湾新幹線プロジェクトに参加する。

 しかし春香には、日本に残してきた恋人に言えない秘密があった。最初の台湾旅行で出会った、エリック(アーロン)という台湾人青年への思いだ。連絡先のメモを紛失して探し出せないままだが、会いたい気持ちはずっと変わっていない。

 実はエリック、日本の設計会社で働いている。もちろん春香は知らない。互いのことを気にかけながら、居場所が入れ替わっていたのだ。

 そして第1話のラストでは、2人が8年ぶりの再会を果たすことになる。

 とはいえ、「国境を越えた熱愛」といったトーンの恋愛ではない。男と女ではあるが、何より「人」として好ましく、また「こころの支え」として大切な存在なのだ。

 原作は吉田修一の小説。脚本は「篤姫」や「江」の田渕久美子。演出は「花子とアン」の松浦善之助だ。どこか懐かしい台湾の風景を背景に、静かで抑制の効いた恋情が、波瑠とアーロンを通じて丁寧に描かれていく。癒やされること必至の秀作だ。

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