追悼・岸部四郎さん 年収1.8億円から自己破産の“波瀾人生”
芸能界の頂点に立ち、どん底の辛酸もなめた。拡張型心筋症で8月28日に亡くなっていた岸部四郎さん(享年71)。「タイガース」メンバーにして俳優、司会、タレントと幅広く活躍するなか、気さくでおおらかなキャラクターからさまざまなエピソードが語り継がれている。
まずは堺正章が孫悟空、故・夏目雅子さんが三蔵法師に扮し、大人気だった日本テレビ系のドラマ「西遊記」(1978年~)で高身長のカッパ沙悟浄を演じていたときのこと。収録の休憩中、夏目さんをこう言って口説いたそうだ。
「俺は1億円、持っている」
結果はおのずと知れるが、当時で言うところの億万長者ではあったらしい。著書にも「その手に乗るな! 年収一億八千万円男の自己破産反省記」(2001年)とある。
「バブル期はそれこそ左うちわで、最初の夫人への離婚養育費で銀行から借金した300万円があれよあれよで数億円から数十億円と雪だるま式に増え、複数のヤミ金から取り立てにあっていたとされています。借金地獄を脱し、何とか返済しようと会員制ヘリコプター運航委託会社の共同経営とか、米ディスコを10億円で買い取るといった話に乗ってしまったからで。ご自分でも趣味の骨董品集めに相当な額をつぎ込んだようですけどね」(スポーツ紙芸能デスク)
そして自己破産。岸部さんは13年半にわたって司会を務めた日本テレビ系朝のワイドショー「ルックルックこんにちは」から自主降板し、所属事務所から解雇されてしまう。
「54歳の年に脳出血で倒れて緊急入院されています。一命を取り留めたものの、後遺症で視野狭窄に。さらに14歳年下の再婚相手で、マネジャーや運転手をして岸部さんを支えていた愛妻が心臓発作で亡くなってしまいます。まだ43歳の若さで、岸部さんはあまりの落ち込みから、ふだん気さくに応えていたメディア取材にも応じられないありさまでした」(前出のデスク)
岸部さんと同じ「ルックルック」のレギュラーだった芸能リポーターの城下尊之氏はこう言う。
「このとき、岸部さんのご自宅に伺うと、部屋は散らかり、足の踏み場もないほどだったのを覚えています。『弁当を持ってきて』というので、何個も抱えていくと『これはありがたい』とおっしゃっていた。伺ったのはメディアが求めるコメントをいただくためでしたけど、あまりの落胆、疲弊ぶりに僕がワープロで代筆することになり、文面をお見せしたら『うん、それでええよ』って。サインだけしていただいて。そういえば『ルックルック』でも、本番直前にスタジオ入りされて、冒頭のVTRが流れた途端、毎日のように居眠りされていたこともありました。そして番組がはじまり、全国のみなさんに『おはようございます』と挨拶されたあと、つづきに困ったのか、こちらを向いて『ねえ、城下さん』といきなりコメントを振られて、びっくりしたこともあります。本当に気さくで、気楽で、人間味のある方でした」