解散覚悟でブレイクの的を射た すゑひろがりず最後の一矢
そこから1年ほど漫才をやっていたが、オーディションに落ち続け、一度も劇場に立つことすらできなかった。「何があかんのやろ」とビデオカメラに撮った自分たちのネタを再生してみた。
「何がどころか、何もかもあかんねんもん。自分ら観て、『こんなふたりが人を喜ばせられるわけない』って」(とうこう・あい「QJWeb」2020年7月11日)と実感した。
30歳を目前にし、絶望感を覚えた2人は最後に既にエントリーしていたオーディションだけ出て、それがダメだったら解散しようと決意した。そのオーディションでやったネタこそ、数カ月前にお遊びのようなノリでやった「狂言風」のネタだった。今までやった中で一番変なネタをしようと思って選んだのだ。これがウケて着物や鼓を買い、コンビ名も変え、それに「全振り」した。
大宮の劇場所属となり営業スキルを身につけたすゑひろがりず。三島は営業で安定して毎月20万円稼げればいいと考えていたが、南條はそれを一生続けるためには1回でいいからハネなければいけないと考え、M―1を目標に据えた。