酒井くにおさん 春団治師匠に誘われた「飛田でもう一軒」
ブランデーとか、当時は1本何万円もするお酒を先輩方には飲ませてもらいました。私はウイスキーが好きでね。調子に乗ってくると氷も入れないで飲む。それでもシャキッとして帰りましたよ。
それから3代目の桂春団治師匠にはかわいがってもらってましたね。丁寧な方で、角座でご一緒の時も私にも挨拶してくださって。
坂町にあった芸人が集まる店で何人かで飲んでいた日ですよ。
「くにおくん、ちょっと付き合ってくれないか」と。2人きりで飲みに行ったことがなかったもので、雲の上の大師匠に誘われて「どうしよう……」と思っていたら、「一軒だけつきあってくれ」と。
カウンターだけの洒落たバーで、大声ではしゃべらず、静かに2杯飲んで、「もう一軒だけつきあってくれ。飛田(※飛田遊郭が存在した場所)に行こう」と。
「えー!」と思い、まさか師匠が……と変な想像してついていったら、上品なお寿司屋さんでした(笑い)。でも、残念ながら私、魚が駄目なんですよ。
「何でも頼みな」と言われて、私が「卵」と言うと、師匠がビックリして「通だね!」と。すぐ食べ終わって、「すみません、キュウリ巻き」と言ったら、そこで魚が駄目と気づいたみたいで何も言わなくなりました。春団治師匠は静かなお酒で、奇麗な飲み方でしたねぇ。