「全裸監督2」山田孝之は応酬話法炸裂!村西とおるが前作以上に乗り移っている
原作者・本橋信宏氏が緊急寄稿!
結論から言うと、Netflix世界190カ国同時配信「全裸監督 シーズン2」は、2年前に配信されたシーズン1を超えた傑作に仕上がっている。絶賛されたシーズン1はシーズン2を見てもらうための伏線だったのではと思わせるほどだ。
■シーズン1を超える傑作
かくて「全裸監督」シーズン1・2はドラマ・映画史に残る歴史的大作になったのは間違いない。
坂本和隆、後藤太郎をはじめとするNetflixプロデュース陣の力量があればこそで、日本もいよいよプロデュース力を問われる時代に入った。
映画で「続」「新」というのがタイトル前につくと、1作目より落ちるものだ。正直なところ、シーズン2を視聴する際に、シーズン1より期待値を下げて見ようと思っていたが、まったく杞憂だった。
村西とおるがさらに乗り移った山田孝之
シーズン1では、村西とおるを演じる山田孝之が、一介のサラリーマンから野望をたぎらせてアンダーグラウンドの世界に身を投じ、ビニ本・裏本からAVの帝王に成り上がる成長物語だった。成り上がる過程は、誰もが興味を抱くものである。
ところがシーズン2は、頂上に達した村西とおるが一気に転落していくさまを描いている。
見るのはつらい。
落ちて落ちて落ちて落ちて……。スタートラインにもどるのではなく、さらにさらに底辺まで落ちていく。
巨万の富を失い、親友を失い、信用も名声もすべて失った男は、どん底で何を見上げたのか。
シナリオはシーズン1の山田能龍が引き継ぎ、あらたに気鋭の小寺和久が加わった。シーズン2は、この2人が繰り出す起伏に富んだ物語が大きな魅力だ。
シーズン1につづき武正晴総監督が2を受け継いだ。後藤孝太郎監督はシーズン1全8話の助監督を務めた人物であり、最高の演出陣になった。
村西とおるを語るとき必ず出てくる、芸能界最大のプロダクションとの争闘を彷彿させるシーンが、なんとシーズン2で登場する。地上波でも既存の映画でもあり得ない。香具師を思わせる山田孝之の応酬話法も磨きがかかり、シーズン1よりもムラニシが乗り移っている。
村西の心強い相棒である川田社長役の玉山鉄二の怪演ぶりも見どころだ。天井から玉山が亀のようにぶら下がっている理由は、本作最大の肝である。
シーズン1で裏社会に生息する男トシを熱演した満島真之介は、多くの満島ロスを生んだ。今回も神がかった演技で、またもや満島ロスが大発生するだろう。
クラブホステス・サヤカを演じる西内まりやとトシ・満島真之介はネオン街のロミオとジュリエットだ。西内まりやは、筑波久子、前田通子で途切れた日本映画のバンプ女優の命脈を復活させた。
脇を固める共演陣に宮沢りえ、吉田栄作、草刈民代
AV女優奈緒子を演じた冨手麻妙の裸身は、究極のエロスだ。本物のヘアメークかと思わせた演技派・伊藤沙莉、黒木香を演じて衝撃を与えた森田望智も健在。助監督が男優を務めたダイヤモンド映像が本作でも再現される。ラグビー後藤(後藤剛範)、助監督三田村(柄本時生)が脱ぐ。柄本の男優初登場場面は本作最大の爆笑シーンだ。
村西とおるのダイヤモンド映像経理担当を演じたMEGUMIの不思議な存在感も忘れがたい。村西とおる夫人・乃木真梨子を演じた恒松祐里が魅せた清涼感は、ニューヒロインの誕生にふさわしい。
宮沢りえ、吉田栄作、草刈民代、室井滋、國村隼という大物が脇を固める豪華さ。山田孝之も「世界でも通用するみたいだよ、という再確認ができた」と明かしている。
そうだ。
ハリウッドに行く必要はない。ここがハリウッドだから。