「ミステリと言う勿れ」菅田将暉と並んで賛辞を受けるべきは原作者
面白い青年が登場したものだ。「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ系)の主人公、久能整(菅田将暉)である。事件を解決へと導く、ミステリードラマの主人公だが、刑事でも探偵でもない。天然パーマが特徴的な、フツーの大学生なのだ。
しかし独自の鋭い分析と、それを「語る力」が半端じゃない。第1話では、同じ大学の学生が殺害された事件で警察の取り調べを受けた。目撃証言や犯行に使われたナイフなどの証拠を突き付けられ、完全に犯人扱い。だが整は動じない。刑事たちがそれぞれに抱えた葛藤を見抜いて驚かせる。
さらに彼らの論理や主張の矛盾を指摘し、「真実は一つなんかじゃない。人の数だけあるんですよ。でも、事実は一つです」と持論を展開。淡々と相手を切り崩していく菅田が何ともカッコイイ。
まるで会話劇や舞台劇のような言葉の連打が見事だが、そのセリフのほとんどは田村由美の同名原作漫画そのままなのだ。このドラマに関して、菅田と並んで賛辞を受けるべきは原作者だろう。
アメリカのアカデミー賞の場合、「脚本賞」に選ばれるのは原作を持たないオリジナル脚本だ。小説など原作をベースに書かれた脚本は「脚色賞」の対象となる。第1話は“原作の再現性”の高さが功を奏した。脚本を手掛ける相沢友子の“脚色力”が発揮されるのはこれからだ。