吉田拓郎“風穴”とシャウトの軌跡(後編)たどり着いた「よ~し、長生きしなきゃな!」の境地
「これからの老老人生、ふたり協力して、できれば明るく、できれば平穏に、できればより長く、助け合って生きていこうと思ってます」
吉田拓郎(76)は月1オンエアのラジオ「オールナイトニッポンGOLD」で、妻で女優の森下愛子(64)とのことをしばしば話題にしている。1986年、40歳のときに再々婚した森下とは夫唱婦随、第一線から退く心境を語った東京新聞でのインタビューでも、「(今後は)家内と二人で好き勝手します。二人でべったり夫婦生活したい。とにかく二人で楽しみたい。家内も僕も『ひとりぼっち』だから。いいパートナーとして人生を全うしたいと思っている」とのコメントが掲載された。
■妻・森下愛子の献身
「拓郎さんは2003年に肺がんがみつかり、肺の3分の1を切除する大手術を受けています。さらに更年期障害、ストレス、うつ病の入り口と公表したり、闘病を余儀なくされてきた。2014年にはのどの声帯にがんが見つかり、歌手生命の危機と心配されたものです。そんななか、女優の仕事から離れ、拓郎さんをサポートしてきたのが愛子さん。『ガンバラナイけどいいでしょう』という楽曲は、そんな愛子さんからの励ましの言葉が背景に見え隠れしています」と音楽ライターは言うのだ。
そうした苦難を乗り越え、集大成というラストアルバム「ah-面白かった」を完成させた。6月リリースを発表した今、愛妻と過ごす時間がかけがえのないものに感じているようだ。そして「それこそ笑顔で、『あぁ面白かった』と言いながら旅立てそうな気がする」というのが、拓郎の引退後、晩年のイメージだ。
構成作家のチャッピー加藤氏が言う。
「団塊世代の旗手として、注目されてきた拓郎さんは、人生の締めくくり方でも、この世代から注目されているのではないでしょうか。日本の高度成長を担う一方、好き勝手やってきた世代として評価の二分する団塊世代には、引退後の生き方のモデルケースがないように見えます。功罪含め、どう総括していくのか。拓郎さんは最期まで同世代の旗手なのかもしれませんね」
追悼番組は嫌
すでに拓郎らしさも垣間見える。昨年4月の女性セブンには、愛子さんとは終活を通り越して、死後の話までしているとの友人のコメントが掲載された。
「ちょっと気が早い話ですが、拓郎さんは自分が死んだ後に、『追悼番組』が放送されることが嫌なんです。拓郎さんクラスになれば、各局が追悼番組を組むのは当然。その番組に友人や知人が出て、いろんな思い出話をされるのが嫌だそうで……。拓郎さんは森下さんに『追悼番組の打診が来たら、絶対に断って!』とお願いしたそうです。すると森下さんが、『ベラベラしゃべりそうな人よりも、あなたが長生きすればいいじゃない』と返したとか」(女性セブンから)
拓郎はこの話を冒頭のラジオでも披露し、こう宣言したそうだ。
「よ~し、長生きしなきゃな!」
第一線から退いても、やはり吉田拓郎は同時代の先駆者なのだ。(おわり)