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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

日テレ「ファーストペンギン!」奈緒の“主演女優宣言”とも言える名シーン!

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 連続ドラマの第1話で大事なことは何か。脚本家の倉本聰は、新著「脚本力」の中でこう言っている。

「お客を可能な限り早く、その世界に引きずり込むということがドラマの鉄則じゃないかと思う。その吸引する速度、吸引するまでの時間というのをうんと短縮してやる必要がある」

 その意味で、5日に始まった「ファーストペンギン!」(日本テレビ系)は見事だった。主人公は食い詰めたシングルマザーの和佳(奈緒)。彼女が崖っぷちに立つ漁師の片岡(堤真一)たちと一緒に漁業と自分の人生の起死回生を目指す物語であることを冒頭の5分で伝えていたからだ。

 港町のホテルで仲居となった和佳。ある宴席で彼女の仕事ぶりを目撃した片岡は、寂れた港の「再生」に手を貸して欲しいと頼み込む。和佳の目から見ると、漁師たちの苦境の原因は漁協にあった。船の燃料の調達から流通まで、仕事の全てを支配されているのだ。

 和佳は漁協から離れ、消費者と直接つながる方策を提案するが、片岡たちは尻込みする。すると和佳がキレた。「このままじゃ浜は死ぬ。何とかしてくれって泣きついてきたのは、どこのどいつだよ!」と怒涛のタンカが止まらない。これが奈緒の“主演女優宣言”とも言える名シーンとなった。

 脚本は「義母と娘のブルース」などの森下佳子。奈緒の代表作となる予感とともに期待が膨らむ。

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