<110>オレは今、人形が一番生き生きしてるなって思っちゃってるんだ
今やってる展覧会のタイトルは、「楽園ノ空」なんだよ。もう「楽園」なわけよ。「楽園」のシリーズをずっと撮ってきただろ。これを始めたときは、楽園って、そうじゃなかったんだけど、ようするに、あれだな、ちょっと縁起が悪いけど、墓地、墓地というか死の世界、あの世なんだよ。
あの世は楽園。“死の楽園”ってヘンだけど、楽園はもう死体、しゃれこうべだからね。だから、しゃれこうべが出てくるんだよ。“死の楽園”をね、やってるんだよ(荒木は長年、「楽園」をテーマにした写真を撮影。自分の部屋で花とフィギュア、人形を組み合わせて撮影する「楽園」のシリーズを近年、撮り続けている)。
空もね、ずっと撮ってきただろ。今は、向こうが作品をつくってるわけだよ、空が。オレのための楽園にっていう感じだよ、空もね。「楽園ノ空」なんだよね。
■撮ることによって生かしてるんだよ
楽園だからね、今はさ。それと少女。少女というのが、死人形だけど、生を生かすってんで、撮ってる。撮ることによって、生かしてるんだよ。死んだのを再生している。オレは今、人形が一番生き生きしてるなって思っちゃってるんだよ。まだね、オイタもしちゃってるんだよ(笑)。
胸に手を入れた後だよ、これは。ちょっとずれてるだろ。まだそういう気があるっていうね(笑)。撮るときに、生きてりゃ、喋りとかなんとかでやってくじゃない関係を。今はね、それなしで、無言で対決しだしてっから、ぱぁ~っと。