「BLUE GIANT」の高揚感は生演奏を見るよう 本格的な音楽を体感するライブアニメ映画の魅力
公開中のアニメーション映画「BLUE GIANT」。これは石塚真一の同名コミックを原作に、世界一のジャズプレーヤーを目指すテナーサックス奏者の青年・宮本大を中心にした、仲間たちの青春を描いた作品である。大をはじめとするバンド仲間の演奏シーンが映画の大きな見どころになるが、その絵と音がシンクロしたライブシーンの完成度が半端ではない。バンドは大のテナーサックス、沢辺雪祈のピアノ、玉田俊二のドラムの3人編成だが、その指使いや呼吸の仕方、曲の強弱に至るまで、まるでジャズのライブを見ているような高揚感がある。原作自体、コミックでジャズ演奏の魅力を描き出したことで話題を集めたが、アニメーションにもファンの期待を裏切らない、こだわりのライブ演奏シーンが登場する。
昨年から、完成度の高い音楽のライブシーンが作品のポイントとなるアニメーションが注目を集めてきた。ファーストランの興行収入が197億円を記録した大ヒット作「ONE PIECE FILM RED」(2022年)では“世界の歌姫”として登場するウタのライブが脚光を集め、彼女のキャラクター人気が独り歩きして「NHK紅白歌合戦」に出場するという快挙を成し遂げた。世界的に評価の高い湯浅政明監督の「犬王」(22年)は室町近辺の時代を舞台にしながら、能楽とロックを融合したライブパフォーマンスシーンを作品の中心に置いて、音楽映画として魅力あるものになっていた。