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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

NHK・BSプレミアム「シン・仮面ライダー~ヒーローアクション挑戦の舞台裏~」アクションをめぐる葛藤

公開日: 更新日:

 庵野秀明監督作品の制作過程に約2年間密着したのが、3月31日にNHK・BSプレミアムで放送された、ドキュメント「シン・仮面ライダー~ヒーローアクション挑戦の舞台裏~」だ。

 庵野は「ノスタルジーだけではなく、新しいものを。でもノスタルジーは捨てたくない」と言う。この二律背反ともいえる難題は、制作現場の随所で噴出する。特に「アクション」をめぐる葛藤と波乱は激しく、この番組の見どころとなっていた。

 アクション監督が練りに練ったシーンを、「頭の中が殺陣でいっぱい」「創意工夫が足りない」と庵野はことごとく否定していく。何より「段取り」を嫌い、排除したいのだ。

■俳優陣にも負荷

 主演の池松壮亮をはじめとする俳優陣にも負荷をかける。「自分のイメージを押しつけるならアニメのほうがいい」「僕からイメージを出すことはない。後は役者次第」と考えさせるのだ。

 監督と俳優たちが、アニメとは異なる、実写ならではの「本物感」を探っていく現場はスリリングで目が離せない。ここでもライダーたちの「一生懸命さが見えない」と「段取り」を厳しく指摘。アクション監督と決裂寸前までいく。

 結局、クライマックスは池松、柄本佑森山未來の3人に託され、「ベストは何だ?」と真剣な試行錯誤が続いた。その成果を確かめるためにも映画館へ行こうと思う。

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