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北島純映画評論家

映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。

映画で理解するパレスチナ問題(前編)「アラビアのロレンス」は今こそ鑑賞価値がある名作

公開日: 更新日:

 ハマスによる10月7日の奇襲から約1カ月。現時点で双方の死者は1万2000人を超えた。イスラエル国防軍はガザ地区に対して空爆を加えるとともに地上部隊を投入し南北に分断、ガザ市内での市街戦に突入している。空爆で病院が破壊され幼い命もが奪われる非人道的な惨状に、世界各地で批判が高まっている。

 しかしネタニヤフ首相はこの戦争を「2度目の独立戦争」であると表現し、ハマスを根絶させるまで戦争を継続する決意を表明している。なぜ「独立戦争」なのか。パレスチナ問題は人類が抱える最大の難問ともいわれ、立場により見えるものが異なる。問題の多角的理解に資する映画を見てみよう。

 嚆矢となるのは「アラビアのロレンス」(デビッド・リーン監督、1962年公開)だ。第1次世界大戦当時、アラブ世界はオスマン帝国の支配下にあった。英国は敵対するオスマン帝国の弱体化を図るべくアラブ民族の反乱を画策。その先陣を務めたのが英陸軍少尉ロレンス(ピーター・オトゥール)だった。

 アラブ民族の懐に飛び込んだロレンスはアラブ独立を信じて共に戦う。しかし英国政府は15年にアラブの独立支持とパレスチナ居住を認めるフサイン=マクマホン協定を結んでおきながら、16年には中東地域を英仏ロ3カ国で分割するサイクス・ピコ協定を締結、17年には「ユダヤ人がパレスチナに民族郷土を樹立するシオニズム」の支持をバルフォア外相が書簡で表明した。

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