「秀山祭九月大歌舞伎」は若手が躍動 左近は女形の片鱗示し、染五郎は聡明な義経を演じ切る
9月の歌舞伎座は秀山祭。初代中村吉右衛門を顕彰する目的で、2代目吉右衛門が2006年に始め、2代目没後も続いている。
昼の部最初は『摂州合邦辻』で、菊之助が女形の大役である玉手御前、初代と2代目吉右衛門が演じていた合邦を中村歌六、秀山祭初出演の片岡愛之助が俊徳丸という配役。菊之助が玉手御前を演じるのは4回目なので、すっかり自分のものとしている。前半の本心を明かさない場面は表情を殺しきり、無による狂気を感じさせるが、後半になって狂気ではなく冷徹な計算によるものだと分かり、玉手御前の演技と菊之助の演技がシンクロする。
続いて、夢枕獏原作の『沙門空海 唐の国にて鬼と宴す』。これは初代吉右衛門にも2代目吉右衛門にも何の関係もない演目。なぜこれを秀山祭で上演するのか、意図が分からない。
『沙門空海 唐の国にて鬼と宴す』は、空海が唐へ行ったときの話。2016年が初演の新作で、改訂しての再演。セリフが現代日本語で、歌舞伎らしさはない。それでも演劇として面白ければいいが、次から次へと人物が出てきて、立ったまま説明的なセリフを言うだけ。退屈を通り越して唖然としているうちに幕が下がり、休憩となる。ここでの拍手はまばら。後半になると、少しは盛り上がる。