8月「納涼歌舞伎」 今年は勘九郎・七之助・巳之助の意気込みに感涙
8月の歌舞伎座は「納涼歌舞伎」。これは1990年に、当時は若手だった18代目勘三郎と10代目三津五郎が松竹に頼んで始めたものだった。この2人が相次いで亡くなってからは、松本幸四郎と市川猿之助が主軸となっていたが、今年は、創始者の子である、勘九郎・七之助・巳之助の意気込みが伝わる熱い舞台となった。
夏らしく、第一部と第三部には幽霊が出てくる演目が並ぶ。第一部の『ゆうれい貸屋』は山本周五郎の小説が原作で、幽霊が実在する(変な言い方だが)世界観の物語。坂東巳之助演じる主人公の前に、中村児太郎や中村勘九郎が演じる幽霊が現れることで起きる喜劇で、怪談ではない。
この演目は2007年の納涼歌舞伎で、三津五郎・福助・勘三郎によって演じられ、その時の役を、その息子たちが演じるという、長く見ているファンにとっては感慨深い配役となった。17年前と変わらないのは、家主を演じる坂東彌十郎だ。
第二部は、中村勘九郎の『髪結新三』。父と祖父が得意としていた役に、満を持して初挑戦し、七之助、巳之助、彌十郎らがそれを支える。勘三郎が最後に新三を演じたのは亡くなる半年前の2012年5月で、このとき、勘九郎は勝奴で舞台に出ていたが、まさか亡くなるとは誰も思っていなかったので、ちゃんと教わってはいなかっただろう。それなのに、完璧に自分のものにしている。この父子を見てきたファンにとっては感涙ものだろう。