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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

NHK Eテレ「浦沢直樹の漫勉neo/大友克洋」日本漫画の世界を変えた大友克洋

公開日: 更新日:

 漫画家の執筆現場に密着し、創作の秘密に迫るドキュメント「浦沢直樹の漫勉neo」(NHKEテレ)。3月29日に1年ぶりの放送があり、漫画界のレジェンドともいえる大友克洋が登場した。

 浦沢によれば、ボブ・ディランやビートルズの出現で音楽がガラッと変わったように、大友は日本漫画の世界を変えた。一体何が凄かったのか?

 浦沢が選んだのは「AKIRA」ではなく「童夢」だ。浦沢はもちろん、江口寿史ら多くの漫画家にも影響を与えた作品である。その「原画」を前に大友自身が制作過程を語り、浦沢が解説しながら質問していく。何ともぜいたくな時間だ。

 登場人物が向き合って会話する場面での小津安二郎的「正面切り返し」。物語の流れの中に別のシーンが挿入されることで生まれる「モンタージュ(編集)感」。今は常識になっていることが、ここから始まったのだ。

 大友は言う。「映画、音楽、ファッション、いろんなものが入ってきて作品になる。漫画の中だけで漫画を作ってるわけじゃないんだよ」と。

 さらに浦沢が「私の人生を変えた原稿」と呼ぶのが、超能力を持つ老人が暗闇の中に浮かぶシーンだ。首に巻いた複雑なコードの連なりをホワイト(修正)なしで描いている。大友はこの一発勝負を「呪術」と笑った。

 漫画表現のレベルやスタンダードを変えた「童夢」。再読してみたい。 

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