ミッキー吉野さんが語る「貴重な2枚」の写真…トニー・ベネットと、サミー・デービスJr.と
コンペを勝ち抜き、CMの賞を受賞
もう一枚はサミー・デービスJr.とのツーショット。73年から放映されたサントリー・ホワイトのCMが話題になったのを覚えている人も多いと思いますが、78年のCMは僕が担当、CMの賞を受賞しました。
日本がどんどん景気がよくなり、CMもコンペの時代でした。お金があったんですね。収録はロサンゼルスのサンセットスタジオで行われました。その頃は帰国してゴダイゴとして活動していたから、アメリカまで出かけて行きました。参加したのは前田憲男、佐藤允彦、鈴木宏昌といった日本のそうそうたる音楽家。採用されるにはそれを勝ち抜かないといけない、そうしないと最後のサミーとの収録まで行きつかないわけです。
レコーディングの時に僕が作った曲にドラムのビート感が合わなくて、他のセッションミュージシャンを2時間も待たせてゴダイゴのトミーを呼んで叩いてもらいました。そこまでやってコンペを勝ち抜きました。
次にコーラスをどうするか。僕がエルビス・プレスリーのバックで歌っていたスイート・インスピレーションズがいいと言ったら、それもOKが出ました。
それから最後にサミーがスタジオにやってきて収録です。その際に、演出側から1つの条件が出ました。曲の最後のところにクール・ファイブの「長崎は今日も雨だった」のフレーズを入れてほしいと。それで僕の曲の後に「長崎は今日も雨だった」が流れ、「サントリー」と入ることになったんです。
譜面がある世界じゃないので、サミーに僕の英語歌詞パートは「こう歌ってほしい」と言ったら、すぐに覚えてくれた。「長崎は今日も雨だった」の部分はデモテープに入っていたトミーの声を聴いたサミーが「これでいいと思う」とか言い出して、そのままトミーの歌を使いました。その歌をサミーに一生懸命教えているのがこの写真です。
最初に会った時のことを話すと、まず驚いちゃったのはサミー一人じゃなくて他に6人来たことです。5人はガタイのいいボディーガード、「もう1人は?」と聞いたら「どこでも歌えるようにいつも連れて歩いているピアノプレーヤー」でした。これがアメリカの大物、スターかと思いました。
マイグラスにも驚きました。バッグを開けるとコップがいくつも入っていた。それにはサミーの名前が書いてあって。スターはそこら辺に置いてあるものは使わないんですね。
サミーはシナトラ一家のスターです。その時に、たまたまバークリー時代に一緒に勉強した優秀なトロンボーン奏者と会ったのですが、サミーの仕事で来ているといったらビックリしていました。アメリカでさえ、どんなにうまく潜り込んでも、サミーとの仕事を実現させるのは針の穴を通すようなものだと言って。最後まで行くのはいくつも壁がある、「奇跡だ」と言っていました。
成功したのはバークリーを出ていたことも大きかった。そこは他の人と違っていると思ってもらえたかもしれません。バークリーに感謝です。サミーは「お礼に」と言って、有名なローストビーフの店を予約してくれました。音楽を担当するだけでもすごいのに、サミーが予約してくれた店でローストビーフを食べることもできた。あれはやはり忘れられない思い出です。
その後もダイアナ・ロスやニール・ダイアモンドの仕事の依頼もあったけど、ゴダイゴが売れ始めて受けることができなくなりました。バークリーを卒業して日本に帰ってきたのはゴダイゴを作るためです。天びんにかけて諦めるしかなかったですね。
(聞き手=峯田淳)
■結成50周年Godiego Live!2025
5月30日 札幌市・カナモトホール(札幌市民ホール)大ホール 開演18時
5月31日 旭川市民文化会館 大ホール 開演15時
お問い合わせ グッドラック・プロモーション㈱(℡0570.030.707/平日10~16時)