初監督映画で本物の拳銃をぶっ放した唐十郎
15日夜から唐と安藤は小田原署の別々の雑居房に入れられ、26日夕方に処分保留のまま釈放されるまで留置されることになった。そこでタダでは起きないのがアングラ演劇界の旗手たるゆえん。わずか12日の間に唐は雑居房で一緒になった6人にそれぞれの半生をじっくり語らせたという。
73歳の宝石ドロからはその手口、たばこ3カートンを盗んで捕まった元板前からは盗品市場でいくらで売れるかまで事細かに聞き出していた。唐は彼らの話を今後の芝居に役立てるとうそぶいた。
「逮捕されることについて唐はなんとも思っていなかったフシがある。すでにもっとすごい逮捕を経験しているわけですしね」(同)
69年1月、唐は東京都の中止命令を無視して新宿西口の中央公園で状況劇場の公演を強行。200人の機動隊に取り囲まれながら芝居を続け、終了後に都市公園法違反で現行犯逮捕された。
「20分足らずで紅テントを設営し、機動隊が駆け付けた時は上演が始まっていた。中に観客がいっぱいいるため、機動隊も手を出せず、3時間の芝居を最後までやり遂げることに成功。唐は喝采を浴びたんです」(同)