大腸がん、食道がん…抗菌剤の3剤併用療法で予防できるか
馬場教授の研究では、がん組織内からフソバクテリウムが検出された食道がん患者は325人中74人(約23%)いて、細菌が検出された患者群はそうでない患者群に比べて、生存期間が有意に短かったという。
「その後、フソバクテリウム陽性食道がん患者の遺伝子を調べたところ、とくにケモカインと呼ばれる白血球の輸送に関するタンパク質の遺伝子量が増加していることがわかりました」
実は、このフソバクテリウムが、潰瘍性大腸炎などの腸炎の発症や悪化に関係しているのではないかと、いち早く注目していたのが順天堂大学大学院腸内フローラ研究講座の大草敏史特任教授だ。
かつて自己免疫疾患といわれた潰瘍性大腸炎だが、無菌状態の動物では発症しなかったり、治ってしまうことが判明。腸管の粘膜などで多く見つかるフソバクテリウムが影響していると指摘。これを除菌するため3種類の抗菌薬(「アモキシシリン」「テトラサイクリン」「メトロニダゾール」)を併用するATM療法を独自開発して成果を上げている。
「今回、大腸がんに続いて食道がんの組織から多くのフソバクテリウムが検出され、発症や悪化の原因と報告されたことで、3剤併用療法を含めた抗菌剤による治療が予防法となる可能性が出てきたと考えています」(大草教授)
いずれ、フソバクテリウムの除菌によって、大腸がんや食道がんの発症予防や治療成績のアップにつながる可能性はある。まさにピロリ菌の除菌で胃がんを予防するがごとしである。