著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

内田春菊さんの告白が話題 直腸がんでも人工肛門を免れる

公開日: 更新日:

「左右のお尻を強引につなぎ合わせたので、お尻の割れ目がなくなっちゃったんですよ」

 漫画家ならではの表現で、直腸がん切除による“悲劇”を伝えていますが、そんな“悲劇”を免れるための治療選択が2つ目です。

 まず自動吻合器の登場で、肛門の近くで腸と腸をつなぎ合わせる操作が安全に行えるようになったため、肛門を温存する技術が発達。さらに肛門近くのがんでも、肛門を締める肛門括約筋を残して腸と肛門を縫合することで、肛門温存が可能になっています。

 内田さんは、抗がん剤治療でがんを小さくしてから手術を受け、人工肛門にならずに済む可能性を探ったそうですが、残念な結果でした。

 実は、人工肛門を免れる方法は、ほかにもあります。放射線です。内田さんの治療に、放射線を加えるのです。化学放射線療法は、欧米ではポピュラーな治療法で、手術単独より優れた治療成績が報告されています。手術ができないくらい大きながんでも、化学放射線療法なら、肛門温存の可能性が高まります。

 がんの種類は違いますが、4年前に膀胱がんで亡くなった菅原文太さん(享年81)は、がんと診断された当初、膀胱全摘を勧められました。人工膀胱が嫌で、私の外来にセカンドオピニオンを求めに来られたのです。

 人工肛門も人工膀胱も、排便用に便をためる“袋”を身につけるのは、大きな苦痛でしょう。文太さんは放射線治療で膀胱温存に成功しましたが、必ずしも膀胱や肛門を温存する治療法が説明されるとは限りません。セカンドオピニオンは、放射線科医に求めること。それが第3のポイントです。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  5. 5

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  1. 6

    兵庫県・斎藤元彦知事らを待ち受ける検察審の壁…嫌疑不十分で不起訴も「一件落着」にはまだ早い

  2. 7

    カズレーザーは埼玉県立熊谷高校、二階堂ふみは都立八潮高校からそれぞれ同志社と慶応に進学

  3. 8

    日本の刑事裁判では被告人の尊厳が守られていない

  4. 9

    1試合で「勝利」と「セーブ」を同時達成 プロ野球でたった1度きり、永遠に破られない怪記録

  5. 10

    加速する「黒字リストラ」…早期・希望退職6年ぶり高水準、人手不足でも関係なし