アルツハイマー病が軽症のまま? てんかん薬にかかる期待
アミロイドβの脳への蓄積がアルツハイマー病の発症につながり、また、アミロイドβの脳への蓄積がてんかんに関係していることを考えると、アルツハイマー病対策に、アミロイドβを減らすてんかん薬を用いた方がいい。理想は軽度認知障害段階での、てんかん薬投与。そうすれば日常生活に影響を及ばさない軽症で天寿を全うできるかもしれない。アルツハイマー病を発症してからでは、脳の神経細胞の死滅がすでに始まっている。
「高齢者ではてんかん症状が表れにくいため、米国では軽度認知障害の人には全て、てんかん薬を投与しています。日本では、物忘れ外来を受診した軽度認知障害の方に、認知症検査、脳波、MRIによるASL検査(脳血流動態評価)などをし、てんかんが確認されれば、てんかんの治療も行います」
どれだけアルツハイマー病への進行が抑えられるかは、今後の研究課題。認知症、てんかんの検査・治療を目的とした日本脳神経外科認知症学会が2016年に設立されており、多施設共同でアミロイドβによる認知症とてんかんの大規模調査を実施予定だ。
▽昨年11月、京都大の井上浩久教授らが、iPS細胞を使い、1258種類の既存薬からアミロイドβを減らす効果がある薬3種類を特定。その一つがてんかんの治療薬で、3種類の併用でアミロイドβが作られる量を平均30%以上減らせた。