骨から出る物質で記憶力アップ 縄跳びには侮れない効果が
脳の活性化と運動には密接な関係がある。有酸素運動のウオーキングやストレッチは効果の高い運動だ。
東京都健康長寿医療センターによれば、1週間に90分(1日あたり15分程度)歩く人は、週に40分未満の人より認知機能が良いことが分かっている。
脳の働きに欠かせない血流に影響するからだという。
「軽い運動でも、海馬の新生細胞が増えますし、アルツハイマー病の予防効果もあります」(本郷赤門前クリニック院長の吉田たかよし氏)
その中でも近年、注目されているのが骨運動だ。
2007年に、米コロンビア大学のジェラール・カーセンティ博士らの研究によって、骨を作る骨芽細胞から分泌されるメッセージ物質のひとつ、「オステオカルシン」が記憶力や認知機能に大きな役割を果たしていることが分かった。
「このオステオカルシンはタンパク質で、骨に衝撃が加わると分泌されます。これが記憶力アップにつながるのです。骨に刺激を与えるには、走ったりすることもいいです」(吉田たかよし氏)
この「オステオカルシン」に関しては、17年にNHKの「ガッテン!」でも特集。その際、骨運動の例として、「かかと落とし」を取り上げていた。
かかと落としは、背筋を伸ばし、両足を肩幅に開いて、ふくらはぎの筋肉を意識しながら、かかとを上げて、数秒静止。両足のかかとを床に下ろす。これで、〈骨に体重と動きによる加速度をかけた負荷を加え、体全体の骨に効率良く刺激を加える〉というもの。ただし、目標は1日30回以上となかなかハードルは高い。
■3分程度でOK
もっと手軽な運動としておススメなのが、「縄跳び」だ。
前出の吉田氏のクリニックでは、脳科学と学習医学を活用して受験生を合格させるためのトレーニングを行っている。学生には勉強の合間に縄跳びをさせることで、記憶力のアップを図っているという。
「女性には2重跳び、男性には3重跳びを勧めています。みんな『3分でヘトヘトになる』と言いますから、長く跳べない。そのため時間的な負担にもなりません。オステオカルシンの分泌には年齢が関係ないので、中高年にも効果的。ただ、2重跳びができれば、オステオカルシンがたくさん出るということではありません。跳び方によって分泌量に差が出るわけではありません。踏み出して着地という運動に意味がありますので、出来る範囲でチャレンジしてください」
縄跳びなら、雨の日でも広い室内ならできるし、マンションの玄関先でもできる。3~5分程度なら、ウオーキングよりも手軽な運動だ。