支払いはお札やカードばかり…老化のサインはしぐさに出る
脳の神経細胞は大人になると減る一方だといわれてきたが、定年以降の世代でも増えることが分かってきたのは以前述べた通り。神経細胞を増やしたり成長させるためには、“脳トレ”を含めたさまざまなメンテナンスが必要で、それらを怠ると、“脳の老化”は静かに進んでいく。そして、老化の証拠は普段の言動や行動、ふとしたしぐさにも表れて――。
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まずは自分自身の行動を振り返って、次のようなシーンは思い浮かばないだろうか?
①会話の中でつい、「アレ」とか「あの……」を多用してしまう
②取引先の人の名前が思い出せない。過去、何度も会っていて顔は浮かんでいるのに――
③パソコンばかり使っているせいか、漢字がパッと書けなくなった
④お酒を飲むと若いときより酔いが回るのが早い
⑤(自分の行動を確認するような)独り言が増えた
⑥時代劇などワンパターンのドラマを見る機会が増えた
⑦カラオケで歌う曲はほぼ決まっている
⑧コーヒーを入れに席を立ったのに途中で何をしに来たか忘れる
ひとつも当てはまらない人はご立派。実はこれ、強弱こそあれ、いずれも脳の老化に関係している言・行動だ。20代はともかく、50代のサラリーマンなら3つ4つ当てはまっても不思議ではないらしい。
脳内科医で、近著に「認知症をくいとめる! 脳トレーニングドリル」(PHP)がある加藤プラチナクリニック・加藤俊徳院長がこう言う。
「どれも脳の老化に関係があると思いますが、中でも老化と深く関わってきそうなのは、⑤や⑥です。独り言を言って思い返す行動は、ワーキングメモリーが衰えて確認しなきゃいけない状況になっているのでしょう。また、ワンパターンのドラマを好むようになったのは、新しいことが理解しにくくなった表れ。音楽も同様で、懐メロを好きなのはすぐ思い出して気持ちがいいから。脳が安心するんです。でもこれは、脳がマンネリ化に支配されて新しいモノに対して鈍感になっている証拠でもある。明らかに老化のサインですね」
カラオケでいつも同じ曲しか歌わない上司は、“マンネリ化の支配”の意味で大ピンチ。⑧のケースも「同じ状況が頭の中で維持できない表れ」で、ありがちな老化のサインだとか。
「アレ、アレは、知り過ぎた結果だとも言えるし、忙しすぎる場合も口に出てしまうことがある。年を取ると自分が必要な脳の使い方をするようになりますが、②は普段から顔を記憶する脳の使い方をしているせい。漢字も同様です。パソコンと漢字は脳の違う“場所”を使うので、書く場所を使っていないから書けない。お酒は脳の老化のせいだけではありません。代謝がゆっくりになるのも一因だと思います」(加藤院長)
どれも脳の老化に関係はあるものの、①~④より⑤~⑧の方が、“老化が進んでいる”と考えるべきか。もっとも、老化のサインはコレだけじゃない。加藤院長が続ける。
「たとえば、支払いのとき、1万円札を出して小銭を使わない人は、小銭を数えるのが面倒になっている可能性がある。財布の中にいくら小銭があるか、細かく数える集中力が途切れているのです。カード決済が好きな人も同様でしょう。ビジネスシーンでは、部下の話をジックリ聞くのがツライ場合や、ランチにほぼ同じ店しか行かないのも老化のサイン。注意が必要です」