著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

肉は体に悪いのかどうか検討するにはコホート研究が必要

公開日: 更新日:

 前回紹介したデータでは、「高齢者ほど肉の摂取割合が低く、魚の割合が高い」というものでした。ただ、これはある定めた一時点で、それぞれの世代で調査した結果に過ぎず、「肉や魚」と「寿命」「健康」との関係を検討できるデータではありません。

 それでは肉や魚の摂取と寿命、健康との関係を検討するためにはどうすればいいでしょうか。そのためにはひとつの世代を長年追跡し、肉をたくさん食べる人とそうでない人で、10年後、20年後、あるいは30年後の健康状態や寿命がどうなるかを調べる必要があります。同じ集団を、時間をかけて調査する必要があるわけです。この方法は「コホート研究」と呼ばれる方法です。

 それに対し国民健康栄養調査のように一時点でそれぞれの世代でどうなっているかを調べる研究を「横断研究」と言います。横断研究では何が原因で何が結果かを推測できるにすぎませんが、コホート研究では原因と結果を検討することができます。

 しかしコホート研究なら原因と結果が示せるかといえば、そう簡単ではありません。例えば、肉を食べる人は野菜をあまり食べないかもしれません。そうすると、肉を食べる人の寿命が短いという結果が示されても、それは肉のせいではなく野菜を食べないせいかもしれないのです。

 こうしたデータを正しく解釈するためには、極めて専門的な知識を必要とします。しかし、インターネットの普及により、そうした知識を持たない人が多くの情報を勝手に解釈してまき散らすというのが現状で、どれが正しい情報なのかを見極めるのは一般の方にはとても難しいことなのです。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋