米国での「感染性心内膜炎」の増加は現代社会への警鐘
近年は、「卵円孔開存」という生まれつき右心房と左心房の間に小さな穴=卵円孔が開いている心臓の構造が、感染性心内膜炎と関わっていることがわかっています。右心房と左心房の間の穴を通して静脈血と動脈血が行き来して混ざり合い、静脈血に入り込んだ細菌が左心房に到達して弁に取りついてしまうリスクがアップするのです。
また最近は、心臓の弁のうち三尖弁や僧帽弁のつくりが全体的に脆弱になってきている印象があります。それによってもともと少しだけ血液の逆流がある人が増えているため、血液内の細菌が心臓に感染しやすくなっていると考えられます。
こうした細菌感染が起こりやすい心臓の構造の変化があり、そこに免疫力を低下させる生活習慣病や薬物乱用が加わることで、感染性心内膜炎が増える条件が揃ってしまったのが現状だといえるでしょう。
これは日本で今年、頻発した豪雨災害と同じような構造をしていると感じます。まずは、地球温暖化という全体的な環境の変化によって、台風の性質が大雨を降らせる雨台風に変わってきている傾向があります。そこに、明治時代に造られた堤防や護岸の多くが経年劣化で耐久性が落ちているという条件が重なり、これまでなら乗り切れた台風に耐えられず、河川の氾濫が相次ぎました。これは、気象と治水との全体的な防災バランスのトレンドを読み切れずに対応できなかったということです。